五十音でめぐるワインの旅 <い> 遺跡 / アルメニア
世界最古のワイン遺跡はジョージアにあると多くの人が思っているだろうし、今はそれは正しいのだが、実は2011年からの6年間、さらに古いジョージアの遺跡が2017年に発見されるまで、最古の遺跡の所在地はアルメニアだった。
アレニ1と名付けられた洞窟にある、紀元前3800~4000年前のワイン遺跡だ。(同じ洞窟群では世界最古5500年前の靴も見つかっている)。
ふだんは撮影禁止な場所なのだが、2018年にアルメニア初の国際プレスツアーということで、研究員立ち合いのもと特別に撮影可で入ることができた。
先に進むにつれて陽の光が届かなくなり、スマホのライトで足元を照らす。なにも崖の途中にあるこんな暗い洞窟の奥深くまでブドウを運ぶようなことをせず、もっと開けた平地でワイン造りをすればラクなのにと思いきや、研究員いわく、人骨や発酵槽から血の成分も発見されていることから、当時のワインは儀式的な側面を持っていたと考えられているという。まあ、それならばこのようなちょっと隠れ家的な場所がふさわしいのかもしれぬ。
と、このように重要なアレニ1の遺跡のことを、いったいどれだけの人が知っているだろう?(アルメニアに行ったと言ったら、「え、アルメニアってワイン造ってるの?」とワイン関係者に聞かれたことすらある)
コーカサス国家であるジョージアとアルメニアはワイン産国として古い歴史を持つ。しかし20世紀にソビエト連邦に組み込まれると、ワイン供給国はジョージアで、アルメニアはブランデーの産地に役割分担されてしまう。民主化後も燐国との紛争が続いたため、ワイン造りの本格的な復興が始まったのはこの10年のことで、OIV加盟やワイン協会設立も2014年とつい最近のことだ。
自らをアルメニア人とは呼ばず、”ハイク”、方舟を造ったノアの息子ハイークの子孫だと信じるアルメニアの人たちが造るワイン、もっと日本でも飲まれるようになるといいな。
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